僕の家にもWiiがある。まぁ、僕が一人で気に入って、奥さんがノロウィルスで寝込んでいるときに買出しに行って、ヨドバシカメラで行列を見つけたので並んで買ってきたんだけども。
いろんなBlogで紹介されていて、 もういまさら書く必要もないくらいにWiiは面白い。もっぱらWiiSportsばかりやっているが、似顔絵チャンネルで作るMiiとの同期も楽しいし、似顔絵チャンネルでMiiそのものを作ったり、他のWiiと通信してMiiを交流させるのも楽しい。奥さんも似顔絵チャンネルやWii Sportsをかなり気に入っていて、毎日体力測定している。
あまりにWiiを気に入ったので、ウェブで周辺情報を検索してると、Wiiの公式サイトで面白いコンテンツを見つけた。社長が訊く(社長"に"じゃない)Wiiプロジェクトというもので、社長自らがWiiやLaunchタイトルのプロジェクトメンバにインタビューし、開発時の状況や場面場面での決断を聞いていくというもの。「ゲーム人口の拡大」という明確なビジョン実現のために、決められたスケジュール内で小さな、しかし重要な決断を下しつづけて今僕の目の前にいるWiiにたどり着く過程が見えてくる。よくぞ、既存の常識を疑ってPS3やXBoxとは異なる方向をめざし、周囲の理解が得られにくい中でここまでのものを作り上げたものだ、と感動に似た感覚すら湧き上がった。
同じく公式サイトに、任天堂社長が2006年秋に行ったプレゼンテーションの資料がある。こちらをみると、明確なビジョンと戦略に従ってDSやWiiが作られていることがよりよくわかるだろう。
明確なビジョン、ビジョンのための戦略、ビジョンを信じて忍耐強く実行し続ける社員たち。組織の一つの理想型をみる思いだ。
さらに、システム開発に携わる人間として、インタビュー中にはいくつか印象深い話があった。それは、主にプロジェクト運営の話で、対照的な2プロジェクト「おどるメイドインワリオ」と「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」だ。
まず、おどるメイドインワリオ。これは5~10秒程度のミニゲーム集で、Wiiリモコンを使ったノリ勝負の愉快なミニゲームが大量に収録されているもの。このプロジェクトの達成には、ノリのいい大量のアイデアが必要となるだけに、個別メンバ(またはチーム)がなるべく自由に動けるように配慮されたらしく、開発オフィス前に作られた掲示板には、通りすがりの社員を含め誰もがミニゲームのアイデアを貼り付けることすらできたという。プロジェクトメンバへのインタビューでも、「辛いというより楽しかった」というようなコメントがほとんどだったのが印象的。ゲームの構成(つまりソフトウェアの性質)上、ミニゲーム間の依存関係はほとんどなく、個別チームが好きなように作業をしても成果の最終的な統合作業はあまり困難なものにはならないため、個別チームの自由を最大限に尊重することで、緊密な連絡と作業の同期によるスピード感やノリ・勢いの喪失を防いだのだろう。このような状況は、開発者にとっては「理想郷」といってもいい。開発規模もあまり大きくなく、「理想郷」を実現するための素地は十分にあったが、見事に「理想郷」を実現した幸せなプロジェクトだと思う。
次に、ゼルダ。こちらは ワリオ とは違って、かなり重厚なアクションRPGで、連綿と続くシリーズものの最新作だ。かなりの大作ゆえに開発規模も結構なもので、分業体制を推し進めざるを得ない。しかし、ストーリーやダンジョンは相互に依存しており、分業チーム間でも緊密に作業を同期しなければ進められないことが容易に想像できる。また、シリーズが受け継いできた「ゼルダ」としてのテイストで作品を統一する必要もあり、プロジェクトとしてはかなり難易度が高い。
このプロジェクトでおもしろいと思ったのは3点で、まず最初はベテラン開発陣のしたたかさ。最初から二転三転することを前提に、どう転んでも使い回せるようにうまく部品を作っていくあたりはさすがだ。
2点目は、宮本氏による効果的なユーザー視点の注入。ゲームじゃなくてもそうだが、開発が佳境に入ってくると、「なんとか辻褄さえあわせないと」というところまでしか頭がまわらなくなることが多い。辻褄あわせ(最低限の一貫性確保)はもちろん商品の出荷としては最低限のラインなのだが、実際はユーザーが使って「よし!」と思ってもらえないものを出さないと誰も幸せになれない。わかってはいるんだけど、目先のことしか考えられなくなる。こういう場面で、あえて「正論」を吐いてくれる人、さらに「正論」を吐くだけじゃなく、折れずに実現に向けて協力してくれる人が投入されるのは、厳しいように見えて、とても幸せなことだと思う。逆に、これを幸せなことだと思えなくなった時点で、プロとしてはもう終わりだと思う。そういう意味で、やはりこのゼルダも幸せなプロジェクトだったんだな、と感じた。
3点目は、ゼルダとしての統一感の維持方法。これは岩田社長もインタビュー前に予想していたが、こういう大規模プロジェクトでは、チーム間の連携は決まりきった連絡経路だけでは全く足りず、誰かが全チーム間を走り回ってグルー(のり)となることで、チーム間をかろうじて同期させていることが少なくない。しかし、このチームではそうはなっておらず、なんとなく「ゼルダの雰囲気」をチーム全体が共有することで、ゆるい統合を保っていたそうだ。これは、ゼルダというシリーズ商品の力によるものなのかもしれないが、非常におもしろいと思う。業務システム開発でこのようなアプローチは助けになるのだろうか?
全チームでのゆるいイメージ共有。すでにやっているのは間違いないが、適用範囲を拡大できるかもしれない。
いろんなBlogで紹介されていて、 もういまさら書く必要もないくらいにWiiは面白い。もっぱらWiiSportsばかりやっているが、似顔絵チャンネルで作るMiiとの同期も楽しいし、似顔絵チャンネルでMiiそのものを作ったり、他のWiiと通信してMiiを交流させるのも楽しい。奥さんも似顔絵チャンネルやWii Sportsをかなり気に入っていて、毎日体力測定している。
あまりにWiiを気に入ったので、ウェブで周辺情報を検索してると、Wiiの公式サイトで面白いコンテンツを見つけた。社長が訊く(社長"に"じゃない)Wiiプロジェクトというもので、社長自らがWiiやLaunchタイトルのプロジェクトメンバにインタビューし、開発時の状況や場面場面での決断を聞いていくというもの。「ゲーム人口の拡大」という明確なビジョン実現のために、決められたスケジュール内で小さな、しかし重要な決断を下しつづけて今僕の目の前にいるWiiにたどり着く過程が見えてくる。よくぞ、既存の常識を疑ってPS3やXBoxとは異なる方向をめざし、周囲の理解が得られにくい中でここまでのものを作り上げたものだ、と感動に似た感覚すら湧き上がった。
同じく公式サイトに、任天堂社長が2006年秋に行ったプレゼンテーションの資料がある。こちらをみると、明確なビジョンと戦略に従ってDSやWiiが作られていることがよりよくわかるだろう。
明確なビジョン、ビジョンのための戦略、ビジョンを信じて忍耐強く実行し続ける社員たち。組織の一つの理想型をみる思いだ。
さらに、システム開発に携わる人間として、インタビュー中にはいくつか印象深い話があった。それは、主にプロジェクト運営の話で、対照的な2プロジェクト「おどるメイドインワリオ」と「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」だ。
まず、おどるメイドインワリオ。これは5~10秒程度のミニゲーム集で、Wiiリモコンを使ったノリ勝負の愉快なミニゲームが大量に収録されているもの。このプロジェクトの達成には、ノリのいい大量のアイデアが必要となるだけに、個別メンバ(またはチーム)がなるべく自由に動けるように配慮されたらしく、開発オフィス前に作られた掲示板には、通りすがりの社員を含め誰もがミニゲームのアイデアを貼り付けることすらできたという。プロジェクトメンバへのインタビューでも、「辛いというより楽しかった」というようなコメントがほとんどだったのが印象的。ゲームの構成(つまりソフトウェアの性質)上、ミニゲーム間の依存関係はほとんどなく、個別チームが好きなように作業をしても成果の最終的な統合作業はあまり困難なものにはならないため、個別チームの自由を最大限に尊重することで、緊密な連絡と作業の同期によるスピード感やノリ・勢いの喪失を防いだのだろう。このような状況は、開発者にとっては「理想郷」といってもいい。開発規模もあまり大きくなく、「理想郷」を実現するための素地は十分にあったが、見事に「理想郷」を実現した幸せなプロジェクトだと思う。
次に、ゼルダ。こちらは ワリオ とは違って、かなり重厚なアクションRPGで、連綿と続くシリーズものの最新作だ。かなりの大作ゆえに開発規模も結構なもので、分業体制を推し進めざるを得ない。しかし、ストーリーやダンジョンは相互に依存しており、分業チーム間でも緊密に作業を同期しなければ進められないことが容易に想像できる。また、シリーズが受け継いできた「ゼルダ」としてのテイストで作品を統一する必要もあり、プロジェクトとしてはかなり難易度が高い。
このプロジェクトでおもしろいと思ったのは3点で、まず最初はベテラン開発陣のしたたかさ。最初から二転三転することを前提に、どう転んでも使い回せるようにうまく部品を作っていくあたりはさすがだ。
2点目は、宮本氏による効果的なユーザー視点の注入。ゲームじゃなくてもそうだが、開発が佳境に入ってくると、「なんとか辻褄さえあわせないと」というところまでしか頭がまわらなくなることが多い。辻褄あわせ(最低限の一貫性確保)はもちろん商品の出荷としては最低限のラインなのだが、実際はユーザーが使って「よし!」と思ってもらえないものを出さないと誰も幸せになれない。わかってはいるんだけど、目先のことしか考えられなくなる。こういう場面で、あえて「正論」を吐いてくれる人、さらに「正論」を吐くだけじゃなく、折れずに実現に向けて協力してくれる人が投入されるのは、厳しいように見えて、とても幸せなことだと思う。逆に、これを幸せなことだと思えなくなった時点で、プロとしてはもう終わりだと思う。そういう意味で、やはりこのゼルダも幸せなプロジェクトだったんだな、と感じた。
3点目は、ゼルダとしての統一感の維持方法。これは岩田社長もインタビュー前に予想していたが、こういう大規模プロジェクトでは、チーム間の連携は決まりきった連絡経路だけでは全く足りず、誰かが全チーム間を走り回ってグルー(のり)となることで、チーム間をかろうじて同期させていることが少なくない。しかし、このチームではそうはなっておらず、なんとなく「ゼルダの雰囲気」をチーム全体が共有することで、ゆるい統合を保っていたそうだ。これは、ゼルダというシリーズ商品の力によるものなのかもしれないが、非常におもしろいと思う。業務システム開発でこのようなアプローチは助けになるのだろうか?
全チームでのゆるいイメージ共有。すでにやっているのは間違いないが、適用範囲を拡大できるかもしれない。
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